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ムラカミロキ -MurakamiLoki- nzchao.Exp Official Blog

鳥あえず飛ばない

とある駅のホームで電車待ち。
こういった移動時間中に発生する
ちょっとした暇な時間をどうするかと
日々考えつつもボケッと過ごしてしまう人は
少なくないと思う。


幸い今回の自分にはちょうどいい退屈しのぎ
の対象があった。ハトである。
昼下がりの穏やかな雰囲気の駅のホーム
ハトが数匹、目的もなさそうにうろうろしていた。
単純にそう見ると電車を待ってる人間もハトも
そう大差ないように思えるから不思議だ。


とりあえずハトの後について歩いてみる


テッテッテッテッテッテ・・・


最初は気にせずにいたハトも、段々後ろにいる
自分が気になりだし、やがては追いかけられている
事に気付いたようである。
ちなみにハト等の鳥は目がほぼ真横についているおかげで
人間より断然視野が広い。
だからほぼ真後ろの対象物(自分)もよく見える。
そしてハトは少し苛立ち気味にそのスピードを上げた。


テッテッテッテッテッテ・・・


ふふん、残念だがハトよ、貴様とこの俺様では
足の長さが段違いなのさ!
というような気持ちで後をつける。
実際、ハトと人間でかけっこしたら
人間はダントツである。
右に左に進路を変えたのち
やがてハトは自分の真正面を向いた。
どうやらこいつは振り切れないと悟ったか
反対方向に何か興味の対象を見つけたようである。
が、そこに立ちはだかる人間と言う名の大きな壁。
ハトは自分の右側をすり抜け様としてきた。
すかさず右に一歩踏み込み進路を遮る。
ハトは首をカクカクさせてしばし考えてから
今度は左側から抜けようとしてきた。
同じように進路を遮る。
以下、しばしくり返し。
まさしくハトとのマンツーマンディフェンス。
いや、気分は軽くシャルウィーダンス。


残念ながら地上戦の機動力では
人間様が圧倒的有利である。
そう簡単に抜かせるわけにはいかない。
そうして、行く手を塞ぎながらも
ジリジリとハトを追い詰めて行く。
ついにはホームの端っこまで追い詰めた。
フフフ・・・もう後が無いぜハトちゃんよ・・


ここで一つ断っておくが
自分は決してハトを虐めている訳ではない。
いやはたから見ればそう見えるかもしれないが
少なくともそういう気持ちは無いんである。
捕まえる気も蹴り上げる気も無いんである。
第一よく考えてみて欲しい。
このハト、その気になれば、何時でも自分を出し抜ける
奥の手を持っているんである。そう、もしその技が
発動されれば、我々人間は指を咥えて見ているしかない。


その秘技とは
「飛ぶ」
である。


しかしこのハト、しばらく追い掛け回していたが
一向に飛ぶ気配が無い。
それが気になったもあって、ハトをホームの隅に
追い詰めてみたのだ。


そうしてハトを追い詰めた。
ハトは行き場を無くして困ったように
首をカクカクしている。
さあハトよ!今こそ大空に飛び立つ時!
お前のその偉大なる翼を広げてみせよ!
大丈夫だ、お前は、飛べる。
お前なら、できるんだ!


そう心の中で呟いた時
ハトはついにその翼を広げ、羽ばたいた


・・・と思ったらすぐ下の線路に降りた。


「飛び立つ」のでなく「降りる」


飛ぶ気、0。
なんだか悲しくなった。
思えば、このハトに限らず、最近のハトは
どいつもこいつもやる気・・
もとい飛ぶ気が無さすぎる気がする。
自転車や車に乗っていても
奴らはぶつかるギリギリまで飛ばないので
冷や冷やする限りである。
お前ら少しダレ過ぎだろうと。
そしてナメ過ぎだろう。車を。
轢かれたら死ぬんですよ?
危ないんですよ?その辺解ってますか?


何かの進化論じゃあないが
鳥はかつて飛ぶ必要があったからこそ
飛べるようになったはずである。
元は「飛びたかった」生き物のはずである。
それが、今はほとんどその能力の意義を忘れ
必要性も無くなってしまった結果
こうなってしまったのかもしれない。
事実、駅のホームをウロウロして
人間の食べカスなんかを漁る日々を
送っているなら、飛ぶ必要なんか
ほとんど無いだろう。
「飛ぶ」という能力なんかせいぜい
「あったら便利」ぐらいなのかもしれない。
もはやニワトリと大して変わらない
「飛べないハト」という新たな種が生まれるのは
そう遠い日ではないのかもしれない。


元々は本当に欲しくてたまらないモノだったのに
それを手にしてしばらく経つと
そのありがたさを忘れ、その上に甘え
怠惰に過ごしてしまうという習性は
人も他の動物も実はさして変わらないのかもしれない。