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検察庁法改正法案の問題点について整理

検察庁法改正に抗議、ツイッターで470万超 著名人も
https://www.asahi.com/articles/ASN5B34BYN5BUTIL005.html
www.asahi.com



検察庁法改正案に抗議します に自分も賛同したのですが、色々と読んでるうちに自分も頭がこんがらがってきたので、検察庁法改正法案の問題点を整理しとこうと思います。


1. 今年2月に現行の検察庁法で定年(高検検事長は63歳定年)予定だった黒川検事長の定年は既存法で8月7日まで延長決定済み。しかしこれは国家公務員法の解釈変更による閣議決定で理由も定かではない。本来は「特別法(検察庁法)>一般法(国家公務員法)」で優先順位もおかしい。これの撤回が今まわっている署名の主題。
www.change.org


2. 現職の稲田検事総長は通例では今年7月に退官となる。黒川検事長の定年が延びたことにより、次の検事総長になる可能性が現れた。なお、稲田検事総長は8月14日まで現職に自らの判断で留まることが可能(検事総長の定年は65歳)。留まった場合は黒川検事長の定年再延長がない限り検事総長になることはない。


3. 今回の検察庁法改正が行われた場合でも、施行は令和4(2022)年。黒川検事長は施行前に定年を迎えるので現在の段階では関係ない。しかし、黒川検事長検事総長になった場合、定年が現段階で2年延びる(検事総長の定年は65歳)ので、法改正された場合該当する。


4. 今回の検察庁法改正では検察庁全体の定年が延びる。これ自体は公務員全体の定年延長法案群の枠組みなので問題ない。


5. 検察庁はそもそも行政管轄下だが「検察官及び検察庁は,行政と司法との両性質を持つ機関である」

検察庁 我が国の検察制度の特色
http://www.kensatsu.go.jp/kensatsu_seido/tokushoku.htm

実際には(適切かは判断しかねるが)「身分保障」「定年制」「任命権の通例」などで独立性・中立性やパワーバランスを保っている。


6. 今回の改正法案では、内閣又は法務大臣が「職務遂行上の特別の事情を勘案し」、「公務の運営に著しい支障が生ずる」と認めるとき(検察庁法改正法案第22条第2項・第5項・第7項、第9条第3項・第5項)は、役職定年を超えて勤務させることが可能になる。

内閣官房 国家公務員法等の一部を改正する法律案 新旧対照表 P93
https://www.cas.go.jp/jp/houan/200313/siryou4.pdf


7.「特別の事情」「著しい支障」が曖昧であり、行政の都合で好ましい検事官の任期を伸ばすことができ、司法が行政に忖度し始める可能性もある。検察庁の独立性・中立性や行政とのパワーバランスが大きく崩れる可能性がある。そのため「三権分立」が脅かされることになる。


 「黒川検事長の定年延長の閣議決定がおかしい」という話と「検察庁法改正法案の内容がおかしい」という話と「この2つ関係無いように見えて関係あるのでは? というかあったらヤベェな」という話が並行して起きてるので確かにややこしいです。
 また、検察庁が抱えているその他の多くの問題に関しては、それはそれで声を上げて是正していくべきでしょう。しかしだからと言って今回声を上げることがおかしい・間違いだとはならないと思います。
 安倍首相が黒川検事長検事総長にし、任期を延ばしたいがためにこの一連の流れを作っているのかは自分は判断しかねます。しかし、そもそもそれ以前に問題がありますし、「それが可能になる」ことも確かだと思うので #検察庁法改正法案に抗議します


ちなみになのですが、Twitter上で話題になっている首相官邸ウェブサイトの三権分立の図

首相官邸 内閣制度の概要
https://www.kantei.go.jp/jp/seido/seido_2.html

の行政と国民の関係性がおかしい、という点ですが

とのことで間違っているのは確かですが、現政権どうこうの話ではなさそうです。
(本来なら国民から内閣に「世論」の矢印が向く、もしくは国会・最高裁判所と合わせて双方向の矢印を置くべき)


●参考

内閣官房 第201回 通常国会
https://www.cas.go.jp/jp/houan/201.html

揺らぐ“検察への信頼”~検事長定年延長が問うもの~ NHK WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200325/k10012349971000.html

山形県弁護士会 検察庁法改正案に反対する会長声明
http://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s051.html

検事長の定年延長/法治の基盤が揺らぐ事態だ
https://www.kahoku.co.jp/editorial/20200226_01.html

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【5/12追記】

 なんか所謂「冷静に」とか「興味ありません」的な人からよく下の記事が回ってきまして、読んでみると自分の現状認識とほぼ同じなんですね。(下記事の方は専門家さんなんで500倍ぐらい詳細かつ丁寧です)それで何でシェアする人は反対の意見になるのかなぁと。

いったい検察庁法改正案の何に抗議しているのか
https://note.com/tonfi/n/n95a2265c6273

 上記事は今回の問題点には基本的に全部触れているし、間違っている点も無いと思うわけです。ただそうした問題点を上げながら、問題の本質を「国民に誤解や疑心を与えたまま進めてしまってよいのか」という点に集約させている。この辺を「誤解や疑心を与えた」とするか「おかしいので追求すべき」とするかは考え方の違いと言えばそれまでです。
 多分、上記事は党派性とか政治性をできるだけ外して「冷静に」見ようとしている。そしてシェアする人もそう思っている。ただ三権分立ってそもそも政治的パワーバランスの話なんで「政治性を外して見る」こと自体に無理があるとも思うんですよね。「現行政が司法へ介入する力を上げる」点を批判してるわけで。

 加えて法案内容だけでなく、「黒川検事長が森友・加計問題その他の不起訴に関わって」いて「法解釈変更して黒川検事長の定年を延長し」「その後に改正案を大きく変更して行政判断で定年延長できるようにしてる」という経緯も「事実」としてあるわけです。実際に安倍首相がどう考えてるかは知りませんが、疑惑が向けられて批判されるのは当然のことでしょう。

【ファクトチェック】「 #検察庁法改正案に抗議します 」に沸き上がった反論の妥当性を考えてみた
https://buzzap.jp/news/20200511-kensatsucho-kurokawa-fact-check/

「流行りに安易に流されず冷静でいたい」とか「安倍首相批判勢と一緒になりたくない」というのはわかるんですけど、それでこの一連の経緯をぶった斬ったり批判できないのは、そっちの方が偏ってるしバイアスかかってると思いますよ。冷静になろうとして冷静じゃなくなっている感じというか。


note.com
https://note.com/nzchao/n/nb8bca2644ecf